プロローグ   鉄の巨人


「MSってのはなぁ、性能じゃねぇ。魂だ!根性出して気合入れりゃあ数の差だって
どうにかなるってモンよ!」
「……そうだなぁ。本当にそうなら助かるんだがなぁ……」
〜名も無きジオン兵の会話〜



 November.U.C.0079


 狭い暗闇に。
 巨人が立っていた。
 金属で造られた18メートルの巨人。人はその巨人をこう呼んだ。
 MS【モビルスーツ】、と。
 人が乗りて動かす兵器。創造主である人間を殺す為だけの為に生まれた己の
運命に、巨人は何を思うのだろう。
(――何も思いはしないさ)
 巨人の中で誰かが呟いた。
『まもなく、目標地点に到達します』
 どこからとも無く呼ばれる声に聞こえてか、巨人はゆっくりと足を踏み出す。
歩く度に、密閉された周囲の空間に重々しい音が響き渡った。
 暗闇の前方がおもむろに開く。外から差し込む陽光に巨人の体が照らされた。
 太い金属の腕。
 太い金属の胴。
 そして一際太い、金属の脚。
 手には巨大な大砲を持っている。
 人間をそのままに巨大化させた巨人は、だが顔だけは人のそれとかけ離れていた。
 口が無い。鼻も、耳も無い。
 その顔にはただ、目があるだけだ。神話時代の一つ目巨人の如き十字型の眼に
赤い光彩の瞳が光る。
 遠目にはグレーに見えるだろうか。本来ならば黒と紫に塗られた肌は、つや消し
の銀に塗り替えられている。
 差し込む光の方に歩くと、やがて視界が広がった。この惑星の彼方まで果てなく
広がる雲の海が風に波打っている。そしてまばらに隙間から見える地上の景色も
また、白銀の世界だった。雪に包まれた山岳地帯。
 一面の白の世界を見下ろし、巨人は何を思うのだろう。
(……何も思いはしないさ。機械は何も思いはしない。思うのも、殺すのも、全て
人間の仕業さ)
『おぉい、出撃だと!?こちとら何も聞かされてねぇぞ!』
『整備班長、いえ、それがその……』
『隊長――ッ!マジですか!?俺も連れてってく……ムゴ、ムググ!?』
 巨人の中の誰かは、しきりに変わる声に鼻を鳴らし、言った。
「やってくれ」
『了解。システムオールグリーン、進路クリア。準備は宜しいですか?』
「異常無しだ」
 そして、巨人の背中と脚の後部から高熱の輝きが漏れ出した。
『御武運を』
 巨人の体が浮上する。
 巨人に付けられた名は――。
「ドム、発進する!」



プロローグ   鋼鉄の巨人   了


第一章     死神、現る    に続く



・あとがき
これは私がガンダムにはまって初めて書いたガンダム小説であり、
また初めての戦記小説でもあります。
解釈の違いがおそらく多々有ると思われますが、ご了承ください。
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